実は医療保険についても今年4月に、手術前後における口腔管理の対象が大幅に拡大されました。 手術後は身体の免疫力が下がり 抵抗力が低下するため、肺炎をはじめ、口腔内細菌が原因となる合併症のリスクが高くなります。 そこで合併症を防ぐために、 平成24年から悪性腫瘍等の手術を行う方への口腔ケアが保険対象となりました。 口腔内の感染源の除去による予防効果は非常に高く、 全体の7割にのぼる医療機関が術後の感染予防に寄与できたと回答しています。 そこで今月は、『手術前後等の口腔管理の対象拡大!』についてご紹介したいと思います。
手術前、手術後の口腔内管理が大切
全身麻酔を伴う手術の場合、患者さんの呼吸をサポートするため、口から肺の近くまでチューブを挿入します。 その際、挿入したチューブによって気管や肺の中へ口腔内細菌が大量に侵入して肺炎等の合併症に感染するリスクが高くなります。 その他にもグラグラしている動揺歯があると、挿入の際に脱落し気管内に入って大変なことになります。 そのため術前に口腔ケアで感染源となる口腔内細菌の除去や抜歯、マウスガードの作成といった応急的な歯科治療を行います。 これを周術期等口腔機能管理(しゅうじゅつきとうこうくうきのうかんり)といいます。 「周術期」とは「手術を中心に入院前から術後、および退院後の期間」という意味です。現在では多くの医療機関で行われるようになり、 医科と歯科で連携を取りながら口腔管理を行うケースが増えています。
対象患者の適応拡大!!
これまでは、「全身麻酔下で実施される悪性腫瘍等の手術、臓器移植手術、心臓血管手術、骨髄移植手術」のみが対象でした。 しかし周術期の口腔管理は合併症を予防し回復を促すことでQOLも向上することから、今年4月に対象が拡大され、 「口腔内衛生状態が不良である患者や低栄養の患者、肺炎等の術後合併症のリスクが高いと考えられる患者に対して実施される手術」 において保険が適応されることになりました。つまり手術の種類等に制限されることなく、 医師又は歯科医師の判断で積極的に周術期の口腔管理を実施できるようになりました。 また手術以外でも放射線治療やがん化学療法を受ける方も保険の対象となります。これらの治療では、 口内炎、口腔乾燥、体力の低下によるむし歯や歯周病の悪化等が起こることがあり、口腔管理を行うことが大変重要です。 要介護の方の周術期等の合併症等を未然に防ぐためにも、私たち医療関係者は介護職の皆さまとしっかり連携して 口腔内環境の健全化を進めたいと思います。