デンタルニュース

(平成30年1月号)

力いっぱい歯を食いしばった時の噛む力は、奥歯であれば体重に比例していると言われていて、体重60kgの人なら60kgの噛む力となります。ところが運動時や睡眠中等、無意識に歯を食いしばる時は、最大で体重の2倍の120kgもの力がかかり、それが長期に続くと自分の歯が削れたり、割れたりすることもあります。私たちは食事の時に噛む場合、柔らかい食べ物なら 30kg位、硬い食べ物なら60kg位といった具合に、やわらかいものであれば弱く、硬いものであれば強く自然と噛む力を加減しています。この噛む力の強弱をコントロールする時に、重要な働きをしているのが、歯の周りにある歯根膜という部分なのです。今月は、『歯根膜』についてご紹介したいと思います。

歯の根っこを覆うとても薄い膜

歯根膜とは、歯の根っこの周りを覆っています。歯の靭帯とも呼ばれ、コラーゲン線維がおよそ半分を占める厚さ0.3㎜位の組織です。歯や歯ぐき、神経等と比べるとあまり知られていませんが、実はとてと重要な役割を担っています。

センサーであり、免振装置でもある

歯根膜は、次のような働きをしています。
①歯を支える歯槽骨と歯の間にあり、歯と歯槽骨を強固に結びつけています。
②歯根膜には触覚や痛覚といった感覚があるので、噛んだ時の硬さや微妙な感触、刺激を感知して脳に伝えます。この感覚はとても鋭敏なもので、髪の毛一本でもすぐにわかる程です。揚げ物のサクッという食感や、お煎餅のパリッという食感を楽しめるのもこの歯根膜のおかげでというわけです。このセンサーのような働きによって、硬いものや柔らかいものを食べる時に噛む力を調節することができます。
③歯は、歯槽骨の中に歯根膜繊維によってハンモックのように吊り下げられるような格好になっていて、通常噛むことでわずかに沈んだり微小な揺れを生じたりします。これは食事の時、様々な方向から加わる力を上手く逃して、過剰な力が歯に加わるのを防ぐ免振機能の役割をしています。

原因不明の痛み…

「噛むとなぜだか痛い」ということがあります。特にむし歯があるようでもなく、最初は歯科を受診するべきかどうか悩むかも知れません。実はこのような症状は、歯根膜炎による痛みのことが少なからずあり、自然に痛みが引き治ることはありません。 歯周病や睡眠中の歯ぎしり、食いしばりが原因の歯根膜炎は、歯に外見上の変化は見られませんので自身ではなかなか気付きません。特に歯周病が進行し歯槽骨が破壊されると、同時に歯根膜も喪失することになります。歯根を歯槽骨にしっかり固定する組織が無くなるわけですから、歯はぐらぐら動き、最後には抜けてしまいます。痛みや違和感を感じたら迷わず早めに歯科を受診してください。

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