平成26年4月に診療報酬の改定があります。限られた国の予算内で、増加する要介護者に対応できる体制にするため、在宅介護を一層推進するという国の方針が強く反映した内容となっています。平成27年の介護報酬改定では特養への入居条件が限定されるようですし、いかにして急増する在宅介護を成功させるかが重要な課題となっています。今回の診療報酬改定のなかで、“在宅診療の考え方”が記載されています。それによると、介護サービスと医科と歯科が密に情報を共有して、在宅要介護者を支えることが重要であり、そのケアネットワークを今まで以上に機能させる必要があるとしています。そこで今月は「介護における歯科の役割」についてお届けしたいと思います。
介護における歯科の役割
要介護に対して歯科としてできることは、1.食べられるようにすること、2.誤嚥性肺炎等の感染症を予防すると、3.その他QOLの維持・向上の3つがあげられます。患者さんの状態に合わせて、この3点を計画的に実施することになります
1.食べられるようにする(治療)
後期高齢の要介護では、30~40%が低栄養です。これは歯が抜けたままだったり、入れ歯があわない、摂食嚥下に問題があるために十分な食事がとれないことが主な原因です。特に入れ歯は半年毎に調整が必要です。食べられるようになれば、栄養状態は改善しますし、家族と同じような食事がとれるようになれば、在宅継続の可能性が高まります。食べる楽しみや、噛むことによって脳が刺激されて物忘れの進行を予防する効果なども期待できます。
2.誤嚥性肺炎等の感染症を予防(口腔ケア)
自身で歯磨きできない場合が多く、要介護者の口腔環境は、誰かがケアをしなければなりません。歯科では、ご本人やご家族に対して居宅で療養する上での口腔の管理とともに療養上の指導を行います。例えば家族にとって食事の介助は大変で、むせが激しい時には不安になりますが、摂食嚥下の訓練や指導は歯科が対応できれる領域の一つです。また高齢者では、肺炎が死亡原因の第3位であることからも、口腔内の細菌数を減らすことが大切であり、専門的口腔ケアの実施も歯科の重要な役割の一つです。
3.その他QOLの維持・向上
発音、口臭、口腔乾燥、顔の容貌、平衡機能維持(転倒防止)はいずれも口腔が大きく関与していて、歯がなければはっきりと話せませんし、口臭が強ければ家族でも距離をおいてしまいます。これらは、他人とのコミュニケーションが減少する原因であり、廃用症候群等が進むことにもなります。
生活機能の維持・改善が目的
「食べること」「コミュニケーション」は、QOLの維持・向上に深く関わっていて、いずれも口腔機能によって支えられています。介護における歯科の役割は、要介護者の健康寿命の延長に寄与することと言えます。