今月は『歯の痛み③』として、非歯原性歯痛が生じる「頭痛」と「三叉(さんさ)神経痛」を取り上げてみたいと思います。三叉神経は脳神経の中で最も大きく、口腔、鼻、目等顔全体の感覚(痛い、冷たい、熱い、触った等)を伝える働きをしています。目、上顎、下顎の3方向に枝分かれしているので、三叉神経が何らかの理由で障害を受けると、歯の周辺に痛みの出ることがあるのです。また歯の痛みの原因がよくわからない「非定型性歯痛(ひていけいせいしつう)」というのもご紹介しておきます。
頭痛が原因の歯痛
片頭痛・群発頭痛・・・
片頭痛・群発頭痛・・・片頭痛は女性に多く1~2回/月位の頻度で発作的に起こることが特徴で、吐き気を伴い、寝込んでしまうこともある頭痛です。歯に痛みを訴えるケースがあります。 一方、群発頭痛は男性に多く、頭痛が起こる時期と起こらない時期を1~2年毎に繰り返し、頭痛でありながら、症状は「目の奥から上の奥歯にかけての激痛」と自覚されることが多いため、3~5割の患者さんは歯痛と勘違いして歯科を受診します。どちらの頭痛も、何らかのきっかけで一時的に頭部の血管が拡張して、上顎や下顎方面の三叉神経(②や③の箇所)を刺激することが主な原因と考えられていますが、まだ完全には原因解明されていません。神経内科や脳外科等で精査が必要で、薬剤や酸素吸入等による治療となります。
神経障害が原因の歯痛
三叉神経痛・・・
三叉神経に沿って、顔にピリピリという痛みを感じる疾患です。三叉神経の上顎や下顎神経に障害がある時に、食事の時に咀嚼すると痛い、歯みがきの時にある歯の周囲を触ると痛い等の訴えが多いです。三叉神経痛の原因は、脳内で血管又は腫瘍が三叉神経を圧迫していて、三叉神経の電気信号が脳へ正しく伝わらなくなっているからです。脳神経外科で精査が必要で、薬剤や手術による治療となります。
非定型性歯痛
歯の痛みの原因がわからないものを非定型性歯痛と呼びます。ストレスによって歯の周りの血管が充血する精神的ストレス説や、過去に歯科治療を受けたことで、歯から脳へ痛みを伝える神経が混乱してしまう神経因性説などが原因ではないかと考えられています。歯がないのに痛みを訴えるケースもあり、病態や原因がはっきりしていません。