先日、笑顔が魅力的な女優の坂口良子さんがお亡くなりになりました。結腸がんを患い最終的な死因は肺炎とのことです。肺炎は通常の社会生活を営んでいる人にみられる市中肺炎と、入院中の患者さんが基礎疾患や治療・手術によって感染しやすくなり、院内で発症する院内肺炎とに大別できます。院内肺炎の中でも特に注意の必要なのが、がんの手術後です。そのため厚生労働省では、平成22年4月から「がん等の手術前後の患者に対して。医師と歯科医師が連携して行う口腔管理」を保険対象として、術後肺炎の予防・軽減に取り組めるようにしました。
今月は『手術後の口腔管理の重要性』についてお届けします。
歯術後肺炎はお口の汚れが原因!!
手術はかなりの負担がかかりますから、身体の抵抗力が弱くなります。また全身麻酔では呼吸を人工的に保つ必要があるため、気管へチューブを挿入します。その際に口腔内の細菌が気管に押し込まれような形になることがあります。そのため手術時に口腔内が汚れている方の場合、口の中にいる細菌が術後肺炎の原因となるのです。実際、口の中の歯垢が細菌の貯蔵庫となり、術後肺炎の発症に大きく関与しているとの研究結果が発表されています。術前に口腔ケアをすることが大切であり、抵抗力の落ちている術後も口腔管理が重要であるとしています。
(阿久津等、千葉大日消外会誌 平成21年)
実は術後肺炎の他にも、がん等の手術や治療を行う際に、歯科医師や歯科衛生士が口腔管理を行うことで、さらに次のようなメリットもあるのです。
全身麻酔やがん治療時にも!!
全身麻酔実施時の歯の損傷予防
気管にチューブを入れる時、器具で前歯を破損することがあります。グラグラしている歯や差し歯は、この器具で脱落したり気管内に入ってしまう危険性があります。そこで術前に歯科医師が抜歯や、脱落防止のトゥースガード(歯の保護具)を作成したりします。
がん治療中の口腔管理
がんの放射線や抗がん剤治療時には重度の口内炎や口腔乾燥がみられます。歯科医師の関与により予防・軽減することができます。食事摂取困難な状態を回避して充分な栄養補給を可能にします。
術後肺炎の予防をはじめ、がん等の手術や治療を行う際に、歯科医師が口腔管理に関わることで、身体の回復を促すと同時に、入院日数の短縮につながります。これは患者さんにとって大変なメリットであるといえるのではないでしょうか。