今月は「残根(ざんこん)」についてご紹介したいと思います。 むし歯を治療しないまま放置したり欠けたりして歯の頭部分がなくなったり、根っこだけになった状態を残根といいます。高齢者に多く見られ介護する側も「根っこだけになっているのだから磨かなくても大丈夫」と思ってしまいがちです。 ところがこの残根には食べかすが付きやすく細菌増殖の温床となります。 特に免疫力の低下した要介護者では、誤嚥性肺炎の高いリスクとなります。 残根はそのままでは手入れが難しいので歯科医師による適切な処置をした上で、毎日の継続的な清掃が大変重要となります。
1. 要介護高齢者の残根とは?
高齢者では歯周病や歯ブラシによるこすり過ぎが原因で歯ぐきが退縮し、根元(歯根面)が露出していることがよくあります。 露出した歯根面は酸に弱く、むし歯になりやすい部位です。特に要介護高齢者は薬の副作用なども重なって唾液の分泌量が減少して口の中が 酸性に傾きやすく、むし歯ができやすい口腔環境です。体調不良などで歯みがきができないと、短期間で歯根面に多数のむし歯ができてしまいます。 このむし歯が進行すると、歯が折れたりして頭部分がなくなり残痕となるのです。
2. 残根治療をオススメする2つのメリット
1.歯の根っこの周りには感覚受容器が残っているので物を噛んだときに感覚が得られるなる。
2.根っこが残っていることで歯ぐきの内部にある歯を支える骨が維持されるため歯ぐきがやせにくく、入れ歯が安定する。
3. 残根の対処方法
1.根っこがしっかりしている場合。
むし歯の進行を抑えるため根っこの治療を行い根面にキャップを被せます。残根のながさがある程度残っていれば、 差し歯を立てて修復することもあります。
2.根っこが化膿していたり残根がグラグラして痛む場合。
抜歯します。ただし歯ぐきの切開が必要になりますので服用薬剤や患者さんの負担を考慮してから行います。
3.身体への負担が大きい場合。
抜歯や治療は行わず定期的に口腔ケアを行います。残根は歯ぐきに埋もれるように残っていたり根面が凸凹で一般の歯ブラシでは届き難いためタフトブラシなどで磨くことにをおすすめします。